職人社長が行く

親方になる

さて、独立した私の元にはすぐに仕事の注文が殺到・・・するわけがありません。その頃赤穂市では下水工事が多く行われており、その影響でトイレや洗面台の入れ替えといったリフォームの仕事がかなりありました。そのおかげで妻と2人、何とか食いつないでいくことができました。

でも私は悔しかった。大きな仕事をするのはハウスメーカー、小さなリフォームは私。何でや?という思いが常にありました。若いし、実績もないし、それが当たり前なのかな?でもそれならオヤジの元で必死に修業した、ものづくりの腕を十分に発揮することができへんやないか。・・・そうや!俺もハウスメーカーのようにきれいなパンフレットをつくって、モデルハウスを建て、営業マンを置けば、同じ土俵に上がれるかもしれん、そうしようか?思いは様々に乱れ、一向に自分の生きる道は定まりません。そんな私の迷いを断ち切ってくれたのが、ふと浮かんできたオヤジの言葉でした。

 

 

その言葉を思い出した瞬間、自分を取り囲んでいた靄が、爽やかな風にみるみる吹き飛ばされていくようでした。そうや、職人が頼みにするのは技術のみ。俺はハウスメーカーにはできない、職人を育てる会社をつくろう。今度こそ自分の歩んでいくべき道が、はっきりと見えました。

 

弟子をとって一人前の職人にすることを決意した私ですが、人を雇うにはお金もかかるし、むろん責任も生じます。それはそれで大きな勇気を必要としました。しかも一人前の職人を育てるのは、そう簡単なことではありません。やんちゃなのも居れば、おとなしいのも居る、理屈屋も居れば、感覚派も居るという具合で、弟子の個性も様々です。でも大切なのは、常に親方がぶれないこと、そして叱るときも褒める時も本気で、全身全霊をこめて彼らに対峙することです。

彼らを育てるのに夢中になっているうち、気づいてみれば、私の会社は技術力を売りにした、本格的な注文住宅を建てる会社という評価をいただけるようになっていました。そして赤穂で新築される家の6軒に1軒は、栄建築に依頼してくださるという光栄を与えていただいたのです。

 

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